DMGP2022の裏で、激しくアツかりしデュエルマスターズが行われていたことは誰にも知られていない。否、知る由もない。(だって身内対戦のカバレージ化だもの。)
「フィーチャーマッチテーブルの発表です。
はぐれ狼さんと久保純一さん、お越しください。」
ビッグサイト近くにある東横インの606号室で肉声のアナウンスが響いた。
2人ともGP1日目のアドバンスに参戦し予選敗退、“諸般の事情”でサイドイベントを一切遊べなかったためモヤモヤを抱えながらホテルに戻ってきた。行き場の無いフラストレーションは、彼らに闘争を与える。
我々には時間も、デッキも、対戦相手も、そして幸運にも良いサイズの机もあったのでこの戦いが始まろうとしていた。
今日一日、色々な負けが込んでいる。締めくくる戦いに負けたくないのはどちらも同じだ。
ちなみに勝者にはベッドで寝る権利が贈呈される。敗者は床で腰を痛めることになるだろう。やはり負けられない。
先行:はぐれ狼
2ターン目に《Re:ライフ》、続けて《お清めシャラップ》と順調にマナを伸ばすはぐれ狼。マナゾーンに《カーネル》があることから、光水自然のビッグマナデッキと推測される。
「このデッキ。どうやって動かすんだ…?」
そう呟くには理由があった。実は、はぐれ狼の使うデッキは彼のモノでない。クソデッキビルダー558にほぼほぼ初見で押し付けられているのだ。手探り状態で勝ち筋を辿る姿は、新主人公斬札ウィンを彷彿とさせる。
対する久保純一は3ターン目に《ネ申・マニフェスト》からスタート。火光水の鬼羅.Starデッキであることが判明した。相手の妨害が得意なデッキであるが、使用者本人すら知らないデッキ相手に戦いきれるかがポイントだろう。
手札入れ替えを終えた久保純一は《エヴォ・ルピア》からお得意の大量展開をしてくるだろう。シンカパワーで選ばれなくなる《マニフェスト》はなんとかしたい。はぐれ狼は《バジリスク》をバトルゾーンに送り出し、《マニフェスト》を止めつつ後続に待ったをかけた。
しかし、展開そのものを止められている訳ではいない。久保純一は《エヴォ》+《鬼羅スター》から《ナギテラス》を場に出し、《T・T・T》で手札を補充。久保純一の手は止まらない。《鬼羅スター》の攻撃時に《奇天烈 シャッフ》を呼び出し「6」を宣言。はぐれ狼の《バジリスク》をすり抜けてWブレイクを決める。
苦戦を強いられているはぐれ狼。自身のデッキが、未だ何をするデッキなのか予測がつかない。ひとまず《マニフェスト【聞け】》を使いデッキに回答を問いかける。するとマナゾーンに《バラギアラ-MAX》が落ちた。
「なるほど…?」
そう、クソデッキビルダー558に渡されたのは《バラギアラ-MAX》をフィニッシュに据えたビッグマナデッキ。558の独自の構築理論の一端を受け取ったはぐれ狼は、すかさず《バラギアラ-MAX》を回収してターンを返した。
しかし、558の意図を読み取った者は他にいた。対面の久保純一だ。
パワー6000以下の攻撃を封じる《バラギアラ-MAX》は小型ビートの鬼羅スターデッキにとって天敵ともいえる。
《バラギアラ-MAX》着地前の決着を迫られた久保純一。
またしても《エヴォ》+《鬼羅スター》のコンボから、同じく《ナギテラス》を展開。
唱えた呪文は《瞬閃と疾駆と双撃の決断》!
《その子供、可憐につき》がスピードアタッカーを持って駆けつけた。よって、このターン全てのクリーチャーが攻撃可能になる。
勝負を決めたい久保純一は、《鬼羅スター》からさらなる《シャッフ》を呼び出し「6」宣言で《バジリスク》を動かさせない。
だが、このままやられるはぐれ狼でもない。《【聞け】》でマナは8まで伸びている。
ニンジャ・ストライクで《バジリスク》を呼び出し、既に場にいる《バジリスク》と合わせて久保純一の攻撃を封じ込める。シールドこそ失ったが、攻撃を捌き切ったはぐれ狼。千載一遇のチャンスをもぎ取った。
チャージしてマナは10。《バラギアラ-MAX》が動きだそうとしていた…!
……が、あまりにも《可憐》が重くのし掛かる。
進化クリーチャーである《バラギアラ-MAX》は《可憐》によりタップしてバトルゾーンに出る。つまり、バトルに勝ったときに使えるはずの6000以下の攻撃を封じる能力が使えないのだ。
はぐれ狼が《ウマキン》から探してきた回答は《「六奇怪の四 ~土を割る逆瀧~」》。広がりきった盤面をなんとか食い止めたが、今度は《シャッフ》が牙を剥く。
攻撃時の「6」宣言により、ブロッカーであるはずの《バジリスク》は機能を停止。はぐれ狼は抱えていた《サイゾウミスト》を吐き出さざるを得ず、ジリ貧を強いられる。
これではもぎ取ったターンも有効打としては使えない。はぐれ狼は《カーネル》で《シャッフ》を止めつつ、コストの違うブロッカーを用意。またもや《逆瀧》で延命するのみでターンを返してしまう。
しかし、それに屈する鬼羅スター、否、久保純一ではない。同じ手は喰らわんぞとばかりに、本日3度目の《ナギテラス》を召喚。持ってきたカードをそのまま唱える!
《T・T・T》!!
2体の《バジリスク》に《カーネル》、ブロッカーは久保純一にひれ伏し、《鬼羅スター》ははぐれ狼の首に迫った。
《単騎連射 マグナム》を添えて!
WINNER:久保純一!!!
改めて、はぐれ狼に押し付けられた光水自然バラギアラ-MAXを見てみよう。
とりあえずどこから突っ込んだらいいか分からないが、《バラギアラ-MAX》を見たはぐれ狼はこう語る。
「やっていることは《ドルゲユキムラ》だからコンセプトは分かった。」
もはや5年以上前のクロニクルデッキのコンセプトを一瞬で理解している辺り、なかなかおじいちゃんである。
それに対して適切なメタを行えた久保純一は、そのクロニクルデッキの発売から3年近く水自然ドルゲーザを弄り続けてきた経歴を持つ。こちらもやはりおじいちゃんだ。
何より、こんな奇々怪々なデッキを押し付けた558はこう語る。
「2→4→6を意識するため、4の動きができるカードを8枚から減らしたくなかった。また、6の動きとしても運用できる《【聞け】》と《ウマキン》は合わせて5枚、《【聞け】》の方が多いのは《チェンジザ》から使って強いから、《バイケン》を強く使える《佐助》を3枚と厚くとった。《バラギアラ》はノータイムで埋められる自然単色のフィニッシャーとして優秀で………(尺の都合で割愛)」
ピン投2投が目立つリストの採用基準を1枚1枚丁寧に語る姿はもはやこのゲームに取り憑かれている。文句ナシにおじいちゃんだ。
ちなみに筆者はベストチャレンジャーデッキの《ハンドレッドバレル・ドラゴン》が初代切り札です。おじいちゃんです。
こうして東横インCSもとい、仲良しおじいちゃんマスターズは幕を閉じた。
やっぱり楽しいぜ!デュエルマスターズ!!
文責:ジャイロ